赤ちゃんを抱いたことはあるだろうか。
私はない。
ニューボーンベイビーはきっと甘くって
ミルクの香りをまとわせるには
最適のぴちぴちの肌に、
人を見ると笑う仕様になっていると思う。
人を見ると疑いたくなる疑心暗鬼の心も
嘘偽りを花束にして贈るような
美辞麗句もない。
陶器に近い肌質の真っ白な
ビューティフルクリーチャーなのだと思う。
手は、さらさらだと思う。
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朝9時に目が覚めた。
昨日のこの時間は
授業の始まりだったはず。
シャワーを浴びた12時は昨日のお昼休みで
煮込んだスープのあまりもなければ
炊飯器の中のお米もない。
もう一度眠った15時は英語の授業中。
昨日までいた、日常は
昨日で終わった。
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よし、今日は退職祝い
誰かを誘って飲みに行こう。
ケータイの充電をさして、
夜の予定を練る。
渋谷駅で乗り換えて
んー下北にでも、吉祥寺とかでも、いいなぁ。
とりあえず準備だ。
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午後から18時、
すこしはやいが、始めるとする。
今宵はここ。
“新宿っ子 ダイニング ペコリ “
新宿にした。 自宅からは乗り換えが2本
昔住んでた家が、新宿だったのが理由。
昔のお庭に来たかった。
頑張ってた自分が生きてた場所を
また訪ねたかった。
今日のメインはピザ。
メニューが豊富だ。 若手芸人のネタ帳だ。
店内は、明るいトルコランプで飾られ、
エキゾチックな雰囲気。
ソファ席や個室もあり、パーティなんかや
誕生日に来てみたい。
名物はワンコインピザ
ワンコインで、めちゃくちゃに大きい。
・みんなだいすきマルゲリータ
・女子に人気アドカド&シュリンプ
迷う。
・もち明太子ピザ
・アメリカンミックス
ワッツアップバディ！
まだ迷っている。
こんなにあるのか。ピザ。
・メキシカンミート
テキーラでもいっとくか？
今日は飲めそうだ。
とりあえずドリンクは
ハーフ＆ハーフ
黒ビールの醤油っぽさが少し消え、
ほんのりにわかに甘いビールだ。
ここにはクラフトビール屋さん並みに
揃う黒と白のビールが楽しめる。
もちろん生ビールもいただけるから好き。
美味しいドリンクが来たのだが、
ピザを未だ迷いまくっている。
まるで私の明日からの人生。
脂ぎった手で友人と彼氏と兄弟と、
膝を付き合わせてたべるそいつがひとつに
絞れない。
絞らなくったっていいのかなあ。
・和風照り焼きチキン
・牛すき焼き
変り種もあるようだな。
よし決めた。
私は生まれた時から
ハラペーニョラバーを公言しているので、
ハラペーニョピザ そして マルゲリータ 。
未来も仕事もひとつじゃなくたっていい、
人生は、未来はパラレルだ。
食べたいものを食べ、やりたいことのために
悩み、泣き、油で手をギトギトにしながら、
ピザを食べればいい。
仕事を辞めたことは
声を大にしては言いたくはないと思っていたが、
誰のせいでもない。自分の決断である。
バレバレだ。
もしも辞めなければ、後悔はザラにあるし、
人事部長にも同期にもメールで伝えたくらいだ。
それでも、心の中でちりちりと
燃える火種があることに気づいたから、
消えない火がある意味をいま、
退職して、
自家製サングリアのオレンジがかった
グラスを手に、覚めざめと理解している。
今日の私は肉食系みたいなので、追加注文。
贅沢肉盛り
名前が明瞭会計でセンスが良い。
手羽先 生ハム ウインナー
肉づくし。
三種を1,290円でいただけた。
思ってたより、入っている。
嬉しい。心も満タンだ。
手はベトベトになったし
飲みすぎたし
どうしようもない。
人間くさい。
これがビューティフルクリーチャー。
ありふれた人間の形なんだと信じている。
20何年ほど前に生を受け、
走り続けてきた休息ポイントがここだ。
大丈夫。 もうすこしだけ休憩。
オワリ
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新宿っ子 ダイニング Pecori
新宿駅東口徒歩7分
西武新宿駅徒歩0分
〒160-0021
東京都新宿区歌舞伎町１丁目２５−３
- 営業時間
- 17:00〜翌5:00
- 定休日
- 年中無休
- お問い合わせ
- 050-5272-1051（予約専用番号）
あとがき
隣の席の対峙する子どもは過去の自分はどうだとか、昨日に戻れたらなんてたらればの話でも聞いてくれるだろうか。
届出を書く日のその夜は 晴れ晴れだ。
